本の熱量
当地でも、きのうソメイヨシノが咲き出したようです。去年より5日遅く、例年並みとのことです。今年は熊野ザクラを見に行きたいと思っていたのですが、用事や腰痛で、出かけられませんでした。
これから1週間ほどで、春爛漫となることでしょう。ブログの頭のサクラの写真は、5年ほど前に、京都御所の近くで撮ったものです。どんな用で行ったのかは、忘れました。
島崎藤村『夜明け前』を読み終わったあと、河盛好蔵『藤村のパリ』(新潮社)を再読しました。20年ほど前に読んでいたのですが、あらかた内容は忘れていました。藤村のパリでの下宿のようす、特に下宿の女主人の年齢の調査、藤田嗣治などの画家との付き合い、第一次世界大戦が始まって疎開したリモージュのことなど、現地を何度も訪れ、詳細に記載されています。高齢にもかかわらず、河盛好蔵の旺盛な好奇心、探究心に驚嘆させられます。
『夜明け前』の主人公・青山半蔵と少し重なって、江戸末期に生きた漢方医・澀江抽斎について、微細に調べ、史伝を書いたのは森鷗外です。無名に近い人物への執拗とも思える調査・探索には、鷗外の異様なほどの情熱が感じられます。
『藤村のパリ』からは『澀江抽斎』に匹敵する情熱が伝わってきます。読書の醍醐味です。
うらうらと照れる光にけぶりあひて
咲きしづもれる山ざくら花 (若山牧水)
#「新作を待つ」https://otomoji-14.seesaa.net/article/2016…