スポーツのなぜ?

 プロ野球は後半戦が始まりましたが、パ・リーグでは三連覇中のバファローズは5位に低迷しています。セ・リーグでは連覇をめざすタイガースも前半戦は4位ですが、貯金があり、首位巨人とは3.5ゲーム差で、まだ充分希望が持てます。  今年のバファローズは投打の中心であった山本由伸、吉田正尚が抜け、チームにまとまりが無くなった感じがします。40勝45敗2分で前半戦を終え、首位ホークスとは15.5ゲームも差があり、ダントツ最下位のライオンズにも負け越しています。  特にチーム打率と本塁打数が低く、攻撃力が貧弱で、盗塁も少なく機動力に欠けています。昨年の首位打者・頓宮裕真選手や2021年の本塁打王・杉本裕太郎選手の不振が響いています。誰か投打に救世主が出現して欲しいものですが、後半戦も開始早々、ホークスに3連敗のスタートです。なぜ3割バッターが急に打てなくなるのか不思議です。  大相撲は三月場所で新入幕優勝をした尊富士が、五月場所を右足首負傷で休場して十両に落ち、七月場所は左肩負傷で2日土俵に上がっただけなので、幕内復帰は来年になるのでしょうか?   先場所優勝の大の里も硬くなったのか出足で躓きました。休場あけの照ノ富士は終盤戦で取りこぼしがありましたが、優勝で場所を締めました。貴景勝は大関陥落となり、霧島は大関復帰できませんでした。ますます元大関が増え、大の里や平戸海などの若手とが入り乱れ波乱万丈の様相です。  最近は力士が大型になり、直径4m55cmの…

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自然と人の物語

 振り返ってみると、わたしは「自然」というものには余り関心がないようです。星座とか宇宙の起源とか天体現象に強い興味を持ったことはなく、星座盤を買った覚えがあるのですが、星空を観察した記憶はありません。星座盤は宮沢賢治の影響だったかも知れません。  子供の頃は蝉採りくらいはしましたが、昆虫採集はしなかったし、犬や猫を可愛がったこともありません。30歳代に植物図鑑を買って車に積んでいましたが、植物好きだった叔父の影響だったのでしょう。  海や川や池で魚を釣ったりする趣味もありません。40歳代に毎週のように、家族であちこちの池や湖でバス釣りをした時期があり、諏訪湖や河口湖にも出かけましたが、長男が一時バス釣りに熱中していたせいです。長男が家を出ると、もう誰も釣りはしませんでした。  山を眺めるのは好きですが、登るのは苦手です。一度、家族で伯耆大山に登ったことがあり、山頂からの日本海の眺めは良かったですが、下山時に膝が効かなくなり苦労しました。以後、山登りはしていません。森の中にいると気分がいいのですが、道を蛇が横切ると引き返したくなります。わたしの自然との関わりはこの程度で、山麓をドライブし、深田久弥『日本百名山』を読むくらいのことです。  自然には関心が少ないのですが、人間には興味があります。「人間の自然」というのも自然の一部なのでしょうが、こころを含めての人間の有り様にはいつも関心を持っています。ヒトにはどんな側面や可能性があるのかを知りたいという欲求です…

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生活の中の詩

 いつだったか毎日新聞の書評欄に、石垣りん『詩の中の風景』(中公文庫)が取り上げられていたので読んでみました。詩人の著者が、心に残った詩を掲げ、その詩についてのエッセイを付けたもので、50篇ほどの色々な人の詩のアンソロジーともなり、詩の解説でもあり、その詩が著者に及ぼした反響の記録ともなっています。たとえば・・・      昨日いらつしつて下さい                   室生犀星    きのふ いらつしつてください。    きのふの今ごろいらつしつてください。    そして昨日の顔にお逢ひください、    わたくしは何時も昨日の中にゐますから。    きのふのいまごろなら、    あなたは何でもお出来になつた筈です。    けれども行停(ゆきとま)りになつたけふも    あすもあさつても    あなたにはもう何も用意してはございません。    どうぞ きのふに逆戻りしてください。    きのふいらつしつてください。    昨日へのみちはご存じの筈です、    昨日の中でどうどう廻りなさいませ。    その突き当りに立つてゐらつしやい。    突き当りが開くまで立つてゐてください。    威張れるものなら威張つて立つてください。  <・・・過ぎた日に帰れるはずはないのに、昨日への道はご存じの筈です、と言われると暗示にかけられ、ついその気になってしまいます。/常識の扉がひらいて、心の踏み込む先の風景が見えてきます。/(中略)犀星氏が…

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地政学て何?

 ロシアのウクライナ侵攻以来、「地政学」または「地政学的」という言葉をよく目にするようになりました。なんとなく言葉の雰囲気は分かるのですが、あらためて具体的な内容となると思い浮かびません。そんなおり毎日新聞の書評欄で佐藤優が奥山真司『世界最強の地政学』(文春新書)という本を取り上げ、「・・・傑作だ。アングロサクソン(英米)流の地政学に関する最良の教科書でもある。」と紹介していたので読んでみました。  著者によれば「地政学とは「地理をベースとした国際政治、外交政策についてのものの見方、考え方」ということだそうです。ナポレオンは「地図を見せてみろ。あなたの国の対外戦略を当ててみせる」と言ったそうです。印象的だった事柄を私なりにまとめてみました。  地政学において重要な概念として「シーパワー」と「ランドパワー」ということを取り上げていました。海洋での活動に重きを置くイギリスや米国がシーパワーの国で、ロシアや中国はランンドパワーの国。  ランドパワーの国は歴史的に常に周辺からの侵略の脅威にさらされています。ロシアはモンゴル帝国に250年間近く支配され、ナポレオンやナチス・ドイツに攻められています。中国は周辺勢力による元や清のような征服王朝に支配されています。ロシアは外からの侵略を恐れ、周辺に緩衝地帯を置こうとします。中国は万里の長城を築きました。恐怖のなせる所業です。  ナポレオンが16年かけてもイギリスに勝てなかったのは、イギリス海峡の制海権をイギリスに握られ…

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夏の蕪村

 本棚の奥から引っ張り出した『蕪村句集』*の「夏之部」を眺めていると、いろいろな句が目に留まります。与謝蕪村(1716-1783)という人の言葉への特異な感性が窺われます。    ほとゝぎす平安城を筋違(すぢかひ)に    すゞしさや都を竪(たて)にながれ川  京都の町を空から眺めた視点は新鮮で意外性があり、切り口のおもしろさに賭ける俳句の面目発揮です。    牡丹散りて打かさなりぬ二三片    ちりて後(のち)おもかげにたつ牡丹かな  牡丹の花の華麗な姿を散った後や残像として捉える卓越した手腕には感歎するほかありません。    涼しさや鐘(かね)をはなるゝかねの声    蓮の香や水をはなるゝ茎(くき)二寸  鐘の音の余韻や蓮の香が視覚的に表現されています。松尾芭蕉の「岩にしみいる蝉の声」の反響でしょうか。蕪村は生涯、芭蕉を意識していたようです。    端居(はしゐ)して妻子を避(さく)る暑さかな    夏河を越すうれしさよ手に草履(ざうり)  こんな生活感のあるユーモラスな句もあります。「夏之部」を散見しただけで目に留まる句が次々に現れます。変幻自在な視点で生活の中に詩を見つけています。 *清水孝之 校注『新潮日本古典集成 璵謝蕪村集』(新潮社) #「季節の句歌」https://otomoji-14.seesaa.net/article/2021-05-21.html

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