柿 あれこれ

 紀ノ川べりでの散歩のあと、道の駅で富有柿を買ってきました。紀ノ川流域は柿の産地です。柿は元々はすべて渋柿で、突然変異で甘柿ができたそうです。日本で初めて甘柿が見つかったのは、1214年、相模国でのことだそうです。



   里古りて柿の木持たぬ家もなし (松尾芭蕉)



 渋柿には水溶性タンニンが含まれていて、舌の粘膜と結合するのだそうです。アルコールなどによる渋抜きは、タンニンを不溶性に変化させ、粘膜にくっ付かなくするのだそうです



   渋かろか知らねど柿の初ちぎり (千代女)



 夏目漱石は『三四郎』で < 子規は果物が大変好きだった。かついくらでも食える男だった。ある時大きな樽柿を十六食った事がある。それで何ともなかった。> と書いています。樽柿というのは酒樽に柿を詰めて、アルコールで渋抜きしたものです。正岡子規は松山出身なのですが、西条柿だったのでしょうか。



   渋柿や古寺多き奈良の町 (正岡子規)



 寺田寅彦に『柿の種』という短文集があります。松根東洋城の主宰する俳句雑誌「渋柿」に連載したエッセイを纏めたものです。東洋城は松山での漱石の教え子で、紹介され子規の弟子になっています。宮内省に勤務していたおり、大正天皇から俳句について尋ねられ、「渋柿のごときものにて候へど」と答えたそうです。



 秋の陽光を浴びて輝く柿の実を、しばらくは朝の果物として楽しみます。



この記事へのコメント

  • yoko-minato

    柿…大好きです。
    西条柿は以前よくお取り寄せ
    していました。
    アルコール漬けした渋柿のとろりと
    した甘さ、絶品でした。
    2022年11月02日 17:09
  • 爛漫亭

    yoko-minatoさん、柿は地方によって色んな
    種類があって楽しめますね。なかなか出回りにく
    いようで、見かけ難いですが。西条柿は広島で
    すかね。
    2022年11月02日 17:51
  • middrinn

    法隆寺の句が出てくるかと予想しながら読んでたらハズレました(^_^;)
    松根東洋城は司馬遼太郎の『花神』の松根図書の孫で知りました(^_^;)
    2022年11月02日 18:48
  • 爛漫亭

    middrinnさん、小説の内容をよく憶えていますね。
    東洋城は宇和島藩主と血縁があったそうですね。
    東洋城の柿の句が手元にあればよかったのですが・・・。
    2022年11月02日 20:20
  • そらへい

    柿、近年はあまり食べなくなりましたね。
    熟した柿はおいしいですね。
    子供の頃のおやつは柿か梨が当たれば上等でした。
    家には、渋柿の木が二本あります。
    熟すと鳥たちが食べに来ます。
    2022年11月02日 20:59
  • 爛漫亭

    そらへいさん、最近の子供達は柿のタネを知らない
    かもしれませんね。また、グミとかヤマモモ、アケビを
    取ったりもしないかも。子供達には野山で遊んでほしい
    ですね。
    2022年11月02日 22:18
  • tai-yama

    和歌山には1500円/個の甘柿があるとか・・・
    正岡子規は御所柿(完全甘柿)を食べていたとか。柿博物館のVTRでは
    そのような解説がされていました~。
    2022年11月03日 00:05
  • 爛漫亭

    tai-yamaさん、子規が食べた御所柿完食!は
    見落としていました。五條に博物館があるとは
    知りませんでした。御所(ごせ)が発祥地なのに
    「ごしょがき」とはこれ如何に?
    2022年11月03日 09:54