フランスの音楽

 こどもの頃、フランスの音楽として耳に入ってきたのは、シャンソンと言うちょっと気取ったような唄い方をする歌でした。テレビで芦野宏や越路吹雪といった歌手の名前を覚えました。次はラジオから流れてきたシルヴィ・ヴァルタンの「アイドルを探せ」で、シャルル・アズナヴールといったシャンソン歌手の唄やフランシス・レイの映画音楽もヒット曲としてよく放送されていました。また実存主義という言葉と共に黒ずくめの衣装の歌手・ジュリエット・グレコも評判でした。  CDの時代になって、ドビュッシーやラヴェル、フォーレなども聴くようになったのですが、ドイツ・オーストリア系の音楽とは違って、何か捉えどころがなく、体の表面を通り過ぎて行き、沁み込んでこないのです。音色の重なりの感覚的な面白さが楽しいといえばそうなのでしょうが・・・。ゲルマン系とラテン系の違いなのでしょう。  そんな中で、プーランク(1899-1963)の室内楽曲は何故か楽しく、しかも聴き惚れたりします。ピアノと色々な管楽器を合わせた曲が多くあります。ユニークなピアノ曲で知られるエリック・サティと付き合いがあったようです。  国や民族によって音楽の様相が変わるのは面白いことです。ある意味で「クラシック」というのはドイツ・オーストリアの地方音楽なのかも知れません。   プーランク オーボエとピアノのためのソナタ

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クラリネットはやさし

 クラリネットの音色はほのぼのとした懐かしい響きがあります。こどもの頃、チンドン屋さんが「美しき天然」のメロディを吹きながら、ドサ回りの演劇の宣伝をしていたのを覚えています。すこし大きくなってからはベニー・グッドマンの演奏する「二人でお茶を」などの曲が耳に残っています。クラリネットは1700年ころに出来た楽器だそうです。  晩年、58歳になったブラームスはクラリネットの名手、ミュールヘルトに出合い、魅了され、クラリネットのための曲を作曲しました。「クラリネット五重奏曲」、「クラリネット三重奏曲」、「クラリネット・ソナタ第一番、第二番」です。哀愁を帯び、諦観に誘われるような曲想が高齢者には馴染みやすく、クラリネットの哀感のあるほの暗い音色に相応しく、聴き惚れてしまします。  3月になってから、腰痛に悩まされているのですが、横になってクラリネットを聴いていると、患部にも優しく響くようで、心地よく過ごせます。最近は、ブラームスの室内楽曲が好みになったようです。    ブラームス「ピアノ、クラリネット、チェロのための三重奏曲」

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リュートを聴きながら

 17世紀のオランダの画家・フェルメールに「窓辺でリュートを弾く女」という絵があります。ニューヨークのメトロポリタン美術館が所蔵していますが、絵の具の摩耗が激しく、図版では見づらい絵です。女性がマンドリンを大きくしたような楽器を調弦しているような構図です。  リュートは中央アジア発祥の楽器で、ヨーロッパでは器楽合奏や歌の伴奏に使われ、東へ伝搬されて琵琶になったようです。フェルメールには「ギターを弾く女」という絵もありますので、当時の絵に描かれたようなオランダ家庭では、日常的にリュートやギターを弾いて楽しんでいたのでしょう。  フェルメールより53歳下のバッハには、「リュート組曲」が4曲あります。第3番は「無伴奏チェロ組曲第5番」の編曲で、第4番は「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番」を編曲したものです。リュートで楽しめるように移調したのでしょう。現代ではギターでも演奏されています。  バッハなどの時代様式を示すバロックという言葉は「歪んだ真珠」という意味なのだそうで、ルネサンス様式より情感的ということなのでしょう。フェルメールには「真珠の耳飾りの少女」という絵もあります(捌称「青いターバンの少女」)。真珠の耳飾りの少女が振り返った表情は魅力的で印象に残っている人は多いでしょう(2000年に大阪市立美術館で展示されました)。また絵の少女をモデルにした小説が書かれ、映画にもなりました。                        (wikipediaより)  1881年、修復前の…

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